「昭和元禄落語心中 ~助六再び篇~」第10話

【第十話】
呪いか。それとも救いか

火事と喧嘩は江戸の華なんてぇ申しますが、寄席まで燃えちまったんじゃあ元も子もない。

正に、噺(はなし)になんねぇとはこのことで。

寄席を襲った大火は全てを焼き尽くした。古くて枯れてるだけにこれがよく燃えた。

火元が特定できず不審火として処理された。従っておとがめはなし。

しかし失ったものの大きさは途方もねぇ。

「八雲師匠が守り、そして助六が継いでくれた。あんたがたが生き残ってくれただけでいい」

そういう親方さまだったが、ただまあな、それだけじゃねぇって話よ。

幸い死人は出なかった。ただひとりやけどを負った八雲師匠を除いてけが人もいねぇ。

人さえ残っていればなんとかなる。皆がまた戻ってくる場所を、また落語が聞けるようになるまで頑張るしかねぇ。

小夏はパートの口を見つけた。

助六なそんな姉さんのご所望でだんごを買って来た。

「あたしの場合ね、甘いものが食べたくなるみたい」

お腹をさすりながら小夏がいう。「あんたの子だよ」と。

桜咲く季節。燃えるものあれば、萌えるものあり。

陽気が良くなって来た。こいつぁ春から縁起がいいねぇ!

穏やかな日々が続く。

療養中の八雲は小夏に連れられて縁側へと出てみた。

傍らのラジオでは助六のネタが始まった。演目は「野ざらし」。

助六のそれに合わせて信乃助がおどけてみせる。

二代目の血を継ぎ、三代目の元で育った信乃助は正に落語のサラブレッドだと言える。

ただまあ、その三代目はもともとはどこの馬の骨とも分からねぇチンピラ風情だったんだがな。

小夏がおもむろに切り出した。

「弟子にしてください」

昔の八雲だったらこれを無碍にしていたろう。だがしかし、今や八雲はどこか憑き物が落ちたような感じで、以前のような頑なさが
和らいでいるように見える。

「わかりました」と答えた師匠。永きにわたる二人の確執はここに来てようやく解けたようである。

もう高座には上がれねぇかもしんねぇ。

ただいまはこうして家族と、そして落語のある暮らしを送っている。

これもまたひとつの落語の形なんじゃあねぇだろうか。

落語の神様。それが死神だと知った八雲は、ようやくその呪縛から解き放たれたと言えるだろうか。

気が付けばそこに二代目助六がいた。

ここはあの世か極楽か?

「さあ、行くぜ」

再三生き長らえた八雲にも遂にお向かえが来たのだろうか。それとも呪いか。

落語と共に心中したいと願えばこの世に呼び戻され、死にたくないと思えばひとつ、またひとつと消えゆく命のともしび。

これは八雲が抱える後悔の念が見せる幻覚だろうか。

ならばいっそのこと二代目に付き添われるままに踏み出したら・・・

あるいは救われるかも知れねぇ。

それは何から?てめぇの犯した罪から?それとも落語から?

果たして、二代目はいってぇ何を伝えるために八雲の前に現れたのでありましょうか。


@ムハンホウちぇっそ@
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タグ : 昭和元禄落語心中

2017/03/12 22:28 | アニメ感想COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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