「シン・ゴジラ」日本映画

「新ゴジラ」を観に行くならタオルを持って行け!

12年振りとなる「日本のゴジラ」を観て来た。ネタバレは避けるつもりだが、そもそも「日本にゴジラが上陸して、その進行を阻止する」というだけの内容なのだから、ストーリーがバレるとかあまり気にしなくて良い気もするが。

そう。話はただそれだけ。しかしそこには災害対策を実行するまでの苦難が描かれており、それは主に日本の行政の怠慢による後手後手の政策によるものであるのだが。

最もこれはあくまでフィクションであって、実際に事が起きたらどうなるかは、実際に起こってみなければ分からない。ひとつのパロディとしての日本の姿であったと思う。

人道的な意味で仕事を即座に遂行したい人間がいる。しかしどのような些事であっても閣議決定を執り行わなければ事態が進行しない行政の在り方の中で苦悩する。いかにもなお役所仕事がはびこっているのは現実社会でもよく目の当たりにすることである。

ある意味でこれが日本の日常であり現実である。そしてこの映画が描いているのはその日常にゴジラがやって来たら?というある種のシミュレーションである。

これを「ウルトラマン」で考えてみるなら、あの有名なシーン、ハヤタ隊員がカレーを食べているところに怪獣が現れ、慌てて外へ出て変身を試みるが、そのとき手にしていたのはスプーンだったというアレ。当然、これではウルトラマンに変身出来ない。

これと同じではないが「シン・ゴジラ」にもそれと質を同じくするようなシーンが見られた。ゴジラの存在が映像に捉えられたとき、総理大臣が思わず口にしてしまった一言「あれ、なに?」知っている人がいたら教えて!と言わんばかりの口調であった。

総理大臣とて人間である。驚いたときは率直な感想を持って当然である。しかしやはり一国の大臣が公の席でそれを口走るのはNGのような気がする。

もちろん災害に対する姿勢は真面目である。しかしそれが想定外の未曾有となると、人間どうしたら良いのか分からないもの。期せずして滑稽な姿を晒してしまうのもやむ形無しといったところがあると思う。当然ここは笑う場面である。ぜひ盛大に笑うが良いだろう。

しかし本当に滑稽なのはそこではない。憂うべきは日本の情勢であるということ。先ほども述べたようにこれは日本そのものをパロディしている。当然、全てが真実ではないだろうが、ただ全てが嘘でもないのだろう。政治の在り方、その一部分を極端にデフォルメしたフィクションであり、皮肉を込めたパスティーシュとなっているのである。

ただしかしこれも作品を味付けするひとつのエッセンスに過ぎず、ストーリーの根幹を為すべきテーマではない気がする。

伝えたかったのは「人間」であり、困難に立ち向かう姿勢である。まあこれについては実際に映画を見てもらうしかないのだが、震災以降の映画やドラマなどで「この国はまだ頑張れる」というセリフを聞くことがあると思う。

もちろんそれらの作品の多くは真摯な気持ちでそれを伝えようとしているのだろうけれど、ただ「シン・ゴジラ」で聞かれたそれは、これらのどの作品よりも説得力のある聞こえ方をしたと言うこと。

それは何故か?

大抵、映画の主人公は未曾有にひとりで立ち向かうものである。いやもちろんそこには主人公を支える脇役がいるものだが、演出上あるいはエンターテインメントとして魅せる上で、ある特定の人物を矢面に立てるのは物語を見やすくするし、また観客もそれを喜ぶものだからである。

例えば、主人公と生き別れたヒロインが再び再会する。これに視聴者は一喜一憂する。しかし「シン・ゴジラ」にはそれがない。死んだ者は戻ってこないし、これから作戦を決行する上で生きて帰れる保証などない。

それでも尚、命を懸けて立ち向かってくれという勇気。ここに見られるのは「組織」として動いている日本であり、英雄が全てひとりで解決してくれる夢物語ではないということ。

だからある意味でこの作品はドライである。死んだ者たちの上にこそ未来がある。目の前で命を落とす仲間たちを目を伏せてやり過ごす。痛みの先にある未来、このとき生き残った者は自身の心を殺すしかないのだ。

もちろんそれは苦しいことであり、やりきれない思いあることは間違いない。だが「組織」としてはその先を見据えて行かなければならない。そしてそれを分かって命を懸けてくれる者たちがいる。国のために死ねる。未来のために自分が出来ることをする。

「仕事ですから」そう言って最前線に立つ自衛隊がいて、自分にしか出来ないことを遂行しに集まった民間の有志がいる。この流れがあるからこそ「この国は大丈夫だ」というセリフが効いてくる。そこが熱いのだ!

作中でも語られた言葉「スクラップ・アンド・ビルド」。破壊と創造。それがこの国を強くして来た。困難こそがいつも日本に「ブレイクスルー」をもたらしてくれたと言えないだろうか。

「ヱヴァンゲリオン」で知られる庵野監督がメガホンを撮った作品だが、ご存知の方も多いと思うが特撮好きで知られるクリエイターである。

「ヱヴァンゲリオン」からは特撮からの影響が多く見られるが、「シン・ゴジラ」は庵野監督が自身の原点である特撮へ恩返しを試みたと感じられると同時に、「特撮」→「ヱヴァ」→「特撮」とジャンルを往復し、それぞれのフィードバックを全て詰め込んだ集大成のように見える。

日本にまた「ゴジラ」が戻ってきた。これは日本人のための映画であり、やはりゴジラは「日本のもの」であることを強く実感させてくれた映画であった。

日本人にしか本当のゴジラは描けない。日本人にしか本当にゴジラを理解することは出来ない。庵野監督で本当に良かった。男泣きした。

エンドロールの後、劇場からは拍手が起こった。本当の話だ。

だから、日本人ならこれを観るべきである。


@ちぇっそ@
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タグ : シン・ゴジラ

2016/08/07 00:11 | 【NEW!!!】「シン・ゴジラ」日本映画COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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