「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」樋口真嗣

あなたも大きなお友達に食べられてみないか

話題の実写版「進撃の巨人」観て参りました!ネタバレを避けるため、具体的な内容への言及は避けますが、個人的には概ね楽しむことが出来ました。映画館なので周囲に気を使うため大声は出せませんでしたが、ところどころで爆笑を誘うシーンがあり、ネタとして非常に楽しめるものがあったと思います。

出だしの映像なんかが結構良いのですよね。ファンタジーを舞台とした作品は実写になると違和感を覚えることが多い気がします。特に日本人の場合、西欧的なノリのファンタジーとの映像的相性が悪い。もっともそれは単なる偏見かも知れず、日本人が白雪姫などを演じて、それを海外の人が見たら芸術的に映るかも知れませんからね。

原作にある劇画調のノリとファンタジーの配分が見事にバランス取れておりました。衣装などのディテールも作品の世界観に合わせてチョイスされており、キャストの姿が実に映像とマッチしていたように思います。

しかしながらところどころ「ロケ」と言った感触が残っていたのは惜しい。最近観たばかりのマッドマックスの新作などでは、監督のジョージ・ミラーが小道具に至る全てにチェックを入れていたそうです。その辺りをこまめに、もしくは偏執的に執拗にこだわったかどうかが最終的な出来栄えの違いになったかも知れません。

とは言えこれは許容範囲ですね。撮影地となった軍艦島は本当に雰囲気のある場所で、改めて惚れ直しました。別に私は廃墟マニアと言うわけではありませんが(笑)

映像的なディテールに関して更に突き詰めて見るなら、進撃の巨人特有の器具「立体起動装置」で移動する際のスピード感と言いましょうか、それを通り越して酩酊感すら覚える感覚をもっと出せたらよかったと思います。

これもマッドマックスの新作との比較になりますが、空撮などでひたすら「生」の映像が持つ迫力を重視したマッドマックスは、映画館の大画面で観るとほんとに浮遊している感覚に陥るのですよね。

しかし作品の性質上どうしてもCGでの描写が多くなる進撃の巨人は、映像が「本物でない」分、迫力に見劣りしてしまう部分があると感じたのです。例えば重力や慣性が実際にどのように働くのか。それを「想像しながら」作っているのがCG(だと思う)。だからそこに限界が生じることが想像されます。これが現代の技術での限界なのか、それとも日本映画のレベルを示しているのかまでは議論しないことにしますが。

それは巨人が登場するシーンにしても同じで、もっと「怖い!」「恐ろしい!」という感覚を表現出来たのではないかと思うのです。マッドマックスであったのが砂嵐のシーン。あれは本当に恐かったんです。正に世界の破滅、アポカリプスが到来したのかと思わせる迫力が、映画の底力と言うものを感じさせてくれたばかりだったので、進撃の巨人がそこまで到達していなかったことが単純に残念だったのです。

ただ巨人が人を食べたり、あるいは逆に巨人を打ち倒すシーンなど、その残酷性の表し方はなかなかどうして、80年代スプラッタ作品の数々を通り抜けて来たこの私ですら納得させられる出来栄えだったと思います。

正にその辺り。巨人の恐ろしさを伝えると言うことに特化した映像作りでもって、全編貫いた作劇は一本筋が通っていたと思います。ここで喰われるのか!このタイミングで巨人出てくるか~(笑)などなど。冒頭、ネタとして楽しいと言ったのはこの部分を指します。

ストーリー全体の流れとしては・・・私はアニメ版しか観てませんが、原作のエピソードをだいぶカットしながら、大幅なショートカットを使って圧縮していた展開だったと言えます。

それってダメじゃん?と言う声が聞こえて来そうですが、それでも上手く整合性を取りながら、原作とは「別のお話」として綺麗にまとめてあった印象です。もっとも、明らかに「フラグ」を作るためにねつ造されたシーンなどで、「これいるかな?」と言う気持ちになったことは否めませんが。

そう言った意味ではホラーらしいB級感があったと言えるでしょう。「志村うしろ!」とか、「そっち行っちゃだめ!」と言うのにどうしても向かってしまうお馬鹿キャラの存在とか(笑)そう言った細かいところに目くじらを立てなければ、さほど気になるほどわざとらしいものではなかった気がします。大丈夫、これならまだ許容範囲!

キャラクターについて言えば、概ねキャストははまっていたと思います。もっとも、そもそも原作とは別人と思いながら見ていたので違和感あるいは「これじゃない感」はほとんどなし。むしろキャスティングにはセンスを覚えました。

ただ実写だけに登場する新キャラのシキシマ隊長に至っては、「これ誰?」と感じてしまったことは確か。しかも色んな秘密を知っている風の彼は、作品における重要ポジションに位置しているのだからちと辛いものがあったのは否めない。

よく知らないキャラに主人公の指導をさせたり、ストーリーの進行を担わせてしまったのはあまり褒められたものではなかった気がします。しかしあの胡散臭い感じ、個人的には嫌いじゃないです(笑)恥ずかしいセリフを臆面もなく言い放つキザな態度とか、ラノベを通り越して昭和の香りすら漂って来ます。

そう。だから根底にあるのはむしろ「特撮ヒーロー」ものとしての側面かも知れませんね。最後、エンドロールのときにタイトルロゴが現れるのですが、それがまるで「円谷プロダクション」的なレタリングで思わず吹いてしまったワタクシがおります(笑)

ただひどく納得したのも確か。「そういうノリ」で観ておけば概ね、腹を立てることはないのではないでしょうかね。

主人公であるエレンとアルミンの2人。まだ幼さを残すイケメン同士でもって少しだけ色っぽく見えてしまう辺り、原作に準拠したキャラの魅力を引き継いでいたように思います。これで二次元にしか興味のない腐ったお姉さま方に対する需要も確保出来るかも知れないし、出来ないかも知れませんが。

今回、ミカサの設定がかなり変わっていましたが、それは映画を見て評価を決めて下さい。シキシマ隊長との関係が妙なことになっており、さすがにここは違和感を覚えずにはいられませんでしたが、終盤では今後の展開に繋がるよう上手く原作に準拠したポジションに戻った感があります。

かなり強引と言えばそうなのですが、2部作の後編へ向けて整合性を取りながら、尺に制限のある中で極力矛盾が生じないように進行している脚本の努力からは、まるで血の涙の跡が見えるようです。

さて個人的に最も気に入ったのが、ハンジを演じた石原さとみ女史でしたね。原作そのままのハンジを再現。狂った学者肌の変人と言いましょうか、その雰囲気が見事に表現されていました。

そもそもこのハンジと言うのは原作の中でも飛びぬけて個性の強いキャラで、およそ実在しそうにない人物なのですよね。しかしある意味ではキャラが「立っている」だけに役作りし易いと言った側面はあるかも知れません。

しかしこのように人間の狂った部分をデフォルメしたようなキャラを演じるにはそれ相応の「覚悟のようなもの」が必要な気がするのです。それを石原女史は完全に「振り切った演技」でものにしている。

女優としてまた人として何か大事なものを失いながら(?)、ハンジになりきって見せた石原女史に拍手を送りたいと思います。ハンジ可愛いです!石原女史も惚れ直した!正直なところ彼女だけ「別次元」にいるのですが、それは原作も同じだから問題にすらならないでしょう。と言いますか、周囲と完全に「噛み合わない」のがハンジの一番の魅力であると言えますからね!

主題歌を担当するSekai no owariも何気に悪くなかったと思います。ジャズファンクとでも言うのでしょうか。こじゃれた感じが作中張りつめていた緊張感をほぐすようで、上手いコントラストになっていたと思います。全くと言って良いほど違和感はなかった気がします。

例えば自主制作のゾンビ映画に出演する際、監督から「君はどんな死に方がしたい?」(「死体」になるだけに)と聞かれることがあると聞きます(どこの情報だ

それと同じように、巨人に喰われるならどんな風のが良いかな?と、みなさんもこの夏に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

直近で観たマッドマックスとの比較が多くなってしまいましたが、この二作品に共通するのは「やり過ぎ感」であると思います。マッドマックスならそのスピード感、進撃の巨人なら思わず笑ってしまうほどの残虐性。もっともグロい映像に耐えられないとする方もいらっしゃるでしょうが。もしかしたらその辺りで評価が二分されていたとしたら、もうそれはしょうがないと言う他はありません。

ただ私は高く評価したいと思います。とても面白かったので、これに続く後編を今から楽しみにしています!


@ちぇっそ@
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
スポンサーサイト

タグ : 進撃の巨人

2015/08/03 00:29 | 映画/DVDCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP | 
FC2 Blog Ranking