「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ジョージ・ミラー

俺の名はマックス!

話題のアクション大作「マッドマックス」の新作を観に行って来ました!これがシリーズ第4作目。「サンダードーム」からなんと27年も経っているんですね!

細かな内容については言及しません。ただ私のようなマッドマックスで育った世代(?)にとっては、正にこれぞ「世紀末」な世界が完全再現されていると言ってよく、マッドマックス冥利に尽きるこれ以上ないマッドなマッドマックスを堪能できた喜びで胸をいっぱいにすることでしょう。

ストーリーの大雑把な概要としては、荒廃した世界で水とガソリンを支配する帝王イモータン・ジョーと言うのがいて、「V8エンジン」をご神体(?)としたある種の宗教国家を築いている。

しかしそれらは当然、理不尽な暴力によって統治されており、人民は搾取され虐げられる日々を送っている。

そんなある日、女大隊長のフィリオサが叛乱を起こす。女どもを引き連れて「緑の地」を目指し逃亡を始めたのだ。その中にはイモータン・ジョーの愛人もいたから、さあ大変!

これ許すまじ!とばかりにすさまじい追跡劇が始まる。と言った寸法。

そんな中で我らがマックスはどこにいたのかと言うと、冒頭わずか数分でイモータン・ジョーの部下に捕えられ、捕虜の身に。たまたまフィリオサが起こした騒動に巻き込まれて、偶然脱出の機会を得た。と言ったところ。

とにかく今回は、物語の主導権を取っていたこのフィリオサの活躍がカッコよかったのでございますよ。惚れました。女である彼女でありますが、むしろ「男前」過ぎて惚れたと言って過言ではないでしょう。

「緑の地」そこはフィリオサの故郷でありました。しかし彼女はそこから連れ去られたのです。いつか帰ろうとその機会を伺っていた彼女は、イモータン・ジョーの忠実な配下として振る舞い、幹部としての地位を確立したところで今がそのとき!とばかりに計画を実行したことになります。

ときに父親のように強く、ときに母親のごとくやさしく。女たちを守りながら希望を繋いでゆくその姿はとても凛々しく、母性と父性の両方を兼ね備える様子はSF映画「エイリアン」のリプリーと重なって見えるようでした。

歴代アクション映画ヒロインの中でも、フィリオサの存在は特に際立つものであると私は評価したいと思います。彼女は強さと同時に悲しみを抱く女性であると言えます。そこから生まれるのは慟哭。

例え溺れていてもまだ水が欲しいと願い、生きていてもまだ生きようともがくその姿は、生への果てなき渇望が彼女を突き動かす衝動となって迫ってくるようでさえありました。

これはフィリオサの物語であったと言えます。故郷を求めた彼女。実はしかし、故郷は自らの中にあり、戦って勝ち取ることで知ることになる。戦いの末に得たもの、それは彼女自身の本当の居場所だったと言うお話。

素晴らしいじゃないですか。胸を熱くするじゃないですか!だからフィリオサこそがこの物語の実質的な主人公であったと断言して間違いありません。

その他、気に入った登場人物と言えば、イモータン・ジョーの部下にして、間もなくマックスたちと行動を共にすることになるニュークスというヤツ。コイツが実に人間臭い。

「V8エンジン教」(なんと言うか分からないので便宜上こう記しておく)に傾倒していたニュークスは、最初は狂気に駆られたカルトでしかありませんでした。それがマックスとの出会い、そして女たちとの触れ合いによって次第に人情を見せてくるのですよね。

その過程がなんかもう、ニートで引きこもりの廃人を娑婆に連れ出すことに成功した!そんな感慨に浸れるカタルシスを覚えたり覚えなかったり。

まあそれはともかく。彼の存在は殺伐とした世界の中で実に心癒されるものがあったことは確かであります。サブキャラとしてとても見事な働きを見せてくれたと思います!

そして敵のイモータン・ジョー。これはもう名前勝ち!その異様な風体から何から最高のボスキャラなのですが、「イモータル」(不死)に由来する名称は邪悪さを帯び、そこに「ジョー」と言うありふれたお手軽なアメリカンネームがくっつくと言うバランス。語呂も良いし、なんかこうむやみやたらに強そうでイイじゃないですか!

その他のキャラも素敵な面々が揃っており、敵の連中は元より、フィリオサの故郷で待っていたお婆ちゃん暴走族も大変良い味を出しておりました。例えば自分がお盆とかに帰省したとき、あんなお婆ちゃんがいたら一緒に「ひゃっはー!」してカブで農道にツーリング繰り出しちゃうかもよ!(そんなバカなっ

そしてマッドマックスと言えばメカニック的なディテールも忘れてはならないでしょう。さっきから「V8」、「V8」と言っていますが、マックスの愛車インターセプターにも搭載である8気筒エンジンが、この世界では崇拝の対象となっているのですね。

よくわかんねぇけど、トラックでもなんでもとにかく「V8」乗せとけや!と言う安易な発想が吉(吉なのか?

理屈がシンプルだからこそ、想像力豊かなディテールを実現できると言うのは確かにあると思います。普通なら絶対に車検に通らないような車ばかり、全身トゲトゲの文字通り「痛車」(イタ車)が走ってるなんて、これ以上たのしいことがあるもんですかいっ!

さてここまで来て我らがマックスについてほとんど語っていませんでした。そうなのです。もともとマックスと言う人物はあまり目立っていないのですよね。

1作目からそうだったのかと言うと記憶が遠くてよく覚えていませんが、ただ今回に関して言えばマックスは物語の調整役であり、冒険が円滑に進行するよう途中で起こるトラブルを解決する役目に徹していたように思いました。

トラックのエンジンを直す。敵を撃退する。全てヒロインであるフィリオサをサポートするため。ストーリーを動かしていたのは完全にフィリオサでしたから、マックスは彼女の目的を果たすための黒子となっていた印象があるのです。

いやそれが悪いと言っているわけではなく、よくよく考えてみたらやっぱり1作目からマックスはそんな役目に回ることが多かったような気がしなくもないです。

そう考えるとマックスと言うキャラクターはもともと主人公向きではないのかも知れません。マックスは言わば「視聴者」の目線で物語の中に放り込まれる「傍観者」と言った立ち位置であるとするのが正しいような気がして来ました。

思い返せば、マックスは誰かの目的が叶った後、その場から立ち去ることが多いですよね。今までのシリーズでもそのような光景が見られました。そして何より、彼自身、この荒廃した世界で何を求めてさまよっているのか、その目的が全く分からないのです。いや、そもそも彼に何か目的があるのかすら疑わしいものがあります。

ある作家が言った言葉を思い出します。「主人公には何かを求めさせろ」と。これは創作におけるひとつの鉄則であると言います。しかしマックスにそれがないと言うことは、やはり彼は主人公の器ではないと言うことを証明していると思えて来るじゃありませんか。

果たしてどうなのか。

だけど私はマックスはそれで良いと思うのです。何の目的もない、生きていることに喜びさえ見いだしていない彼の空虚さこそ、この物語の本質であるからです。今回の作中マックスが言った言葉があります。

「この先、160日間走っても、あるのは塩だけだ」

広大な砂漠を前にしてのひとコマでしたが、そう。正にマックスこそはこの「塩」そのもの。どこにでもある何の変哲もないなんでもない存在。それはこの地球上に何億とはびこり、一人死んだくらいでは世界に何の影響も及ぼさない我々自身の姿を示していると言えるのではないでしょうか。

それは生きとし生ける者すべてに当てはまり、例え今は栄華を誇る人類でさえも、いずれは滅び塵と化す世紀が来る。後には何も残らない。特に富や名声など跡形もないどころか、その価値を伝えるものさえなくなってしまうだろうこと。

マックスの生き様はまんまその事実を表しているような気がします。だから「生」には頓着しない。ただ出来事のひとつひとつを見届けることだけをしている。そしてそれに決着が付いたなら、彼は興味を失うかあるいは彼自身が用済みになってしまう。

マックスにはどこにも居場所がないのですね。だから彼はいつもひとりで行動している。ある意味で完全に自立した、または「完結」した人物であると言うこと。どこまでも世界と関わりを持たないスタンドアロンであること。しかしたまにどこかでこうして誰かの手助けに加わることを余儀なくされてしまう存在。

マックスと言うのは本当は実態を持たない亡霊、あるいは東洋思想に根付く「八百万の神」的なものなのかも知れません。言ってみれば彼自身が「世界」そのものであり、どこにでもあって普段なら誰かに意識されることもないのだけれど、深層意識の奥底で確かに徘徊している「こんなヤツがいたら役立つんだけどな」の「概念」として存在していて、ときたま表層に具体性を持って確定される「シュレーディンガーの猫」的な何か。

だとしたらオカルトめいてなんだか気持ち悪いなあと思わなくもないところなのですが、なんかそんなことを妙に考えさせられてしまった今回のマッドマックスはやはり、ただもう俺たちに共通する「概念」としてのマッドマックスを実現させてくれていた喜びでいっぱいなわけです。

存在感なんていらない。何故なら世界などいずれ滅んでしまうのだから。それならば他の何者でもない、何者ですらないマックスこそが、この「最もマッドな世界そのもの」であるとの思いを強くした次第でありました。


@ちぇっそ@
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タグ : マッドマックス怒りのデス・ロード

2015/07/19 00:52 | 映画/DVDCOMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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