タイム・ジャンパー

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戦争の遺留品を闇ルートで売りさばいているボルマン。仲間4人で今日も戦場跡地へ発掘しに来た。彼らは新たな塹壕を見つけるが、そこにあったのは自分たちの軍服姿を写した古い写真だった。そして彼らは不思議な老婆と出会いある約束を交わす。悪い幻覚を見たと思った彼らは、湖へ飛び込み目を覚まそうとするが・・・。湖の中で彼らは何者かに銃撃される。慌てて岸に上がったとき、そこは1942年、第一次大戦の真っ只中だった・・・。


ロシア発のタイムスリップSF作品。「最悪な時代」または「英雄の時代」。過去へ紛れ込んでしまったロシアの若者4人は、ドレッドヘアのチャラ男(序盤で髪を刈られる)に戦争オタク。そしてネオナチかぶれのスキンヘッズと言った雑多な面々。

始めに断っておきますが、ここには純粋な意味で言う「SF映画」のカタルシスは存在しません。これはれっきとした「戦争映画」であり、「SF」は単にスパイスとしてだけ、「本当の戦争を体験させる」ための単なる小道具にしか過ぎないのです。

情報が氾濫し、かつてはいがみ合っていたはずの「ナチ」を崇拝する者まで現れた現代のロシア。アイデンティティを喪失した本末転倒な文化の中で暮らす若者たちが、戦争の中で祖国のため身を賭して戦った兵士たちと交流し、そして彼らはやがて悟ることになる。極論的なナショナリズムなどではなく、「真の愛国心」とは何かを。壮絶でありながらも、とてつもないエナジーを発散させる物語。

迫力の戦闘シーンは、ロシア映画が伝統とする「本物志向」によって貫かれ、激しいアクションと銃撃戦に息つく暇もない。作品の重要な要素のひとつとなるこれらからは、「高揚」と「恐怖」を覚えることでしょう。

そして介護兵ニーナとボルマンによるロマンスも忘れがたい。強く逞しい戦うロシアの女であるニーナに、ボルマンは一気に惚れてしまう。かなわぬ恋だと分かっていても、若い2人の勢いは止められない。切なく、そして凄惨な結末には、激しく魂を揺さぶられるものがあります。

タイムスリップしたボルマンら4人は、自らのルーツが根無し草となった迷える現代人。つまりは資本主義化されたステレオタイプなキャラクターとして表現されています。その彼らの持つ能天気さが、戦時中の兵士たちに気晴らしをもたらすことは確かにあったのです。しかし次第に深刻さを増してくる戦況の中、彼ら4人は豊かな生活よりももっと大事な「何か」を発見して行く。

無事に現代へと戻ったとき、彼らの表情には明らかな変化が見て取れます。「今のロシアに本当に必要なものとは何か」、「自分たちが大切にしなきゃいけない物は何か」。彼らの目には、それが見えていたように思われるのです。

単に戦争の悲惨さを伝えるだけでなく、現代のロシアが抱える問題をも提起する。映画としての娯楽性も充分でありながら、そのメッセージは進行形となって今とリンクしてくる。近年のロシア映画の中では、指折りをして数えてよい傑作!


追記:
但し、別物映画「ジャンパー」をパクったような、このB級感バリバリのパッケージは如何なものか。当然、作品の魅力を伝えるはずもなく、妙な偏見を招いて完全な逆効果になってしまっているじゃありませんか!

原題は「МЫ ИЗ БУДУЩЕГО」(「WE FROM THE FUTURE」)。この原題もどうかなって気もしなくはないですが・・・。

私だったら、鬼才エレム・クリモフがその映画人生を賭けて製作した、壮絶で悲惨極まる戦争映画カルト傑作「炎628」の原タイトル、「行きて、見よ!」にちなみ、(彼らは)「行って、見た!」と、したいところ。いかがでしょうか。

重い。確かに重いけれど、凄まじく面白い!
パッケージに惑わされず是非レンタルしてくださいまし。後生ですから!



監督: アンドレイ・マニューコフ
製作: セルゲイ・シュマコフ
脚本: キリル・ベルヴィッチ、エドゥアルド・ヴォロダルスキー、アレクサンドル・シェフツォフ
撮影: ウラジミール・スポルィシュコフ
音楽: マキシム・ロマセヴィッチ、イワン・バリヤーエフ

出演: ダニーラ・コズロフスキー、アンドレイ・テレンチェフ、ウラジミール・ヤグリッチ、エカテリーナ・クリモワ、セルゲイ・マコーヴィコフ、ボリス・ガルキン


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@ちぇっそ@
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テーマ : DVDで見た映画 - ジャンル : 映画

タグ : タイム・ジャンパー

2009/02/26 22:07 | ロシア映画COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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