「被虐の檻」砂床あい


父の会社を継ぐことになった笹原美暁(よしあき)。しかしまだ経験の浅い彼には教育が必要であった。そこで彼に付けられたのは、父の専属秘書であった柊(ひいらぎ)と言う男。ところがこいつがとんでもないサディストで・・・。
作品帯の文句を引用するならば「鬼畜秘書×美貌の若社長 官能で支配する調教愛」とあり、これがそのまま作品の性質を示している。

未熟な若造を冷徹な秘書が夜な夜なしごき上げると言ったものなのだが、ときにこの柊と言う男は、本当に若社長を育てる気があるのかと思ってしまうことがある。彼はあまりに鉄面皮で、それほど容赦のない仕打ちを若社長に強いるのだ。

これには複雑な人間模様が関係していて、事の発端には若社長・美暁の父である笹原逸樹(いつき)の離婚問題が起因している。

母は別れるときに美暁の兄である美月(みづき)を連れて行った。成長したのち偶然兄と再会した美暁は、やがて美月に慰めを求めるようになる。自分が置かれた厳しい環境に耐えられなくなったとき、美暁は兄のもとを訪れている。美月はそんな弟を受け入れ、二人は禁断の関係を結ぶ。美暁にとって美月は、言わば駆け込み寺のような存在なのだ。

しかしそれは次期社長を目指す上でスキャンダルになると考えた柊は、兄のことなど忘れさせるために、それまでより更に激しい戒めを用いて美暁を屈服させようとする。言ってわからないなら、身体に思い知らせるだけだと言う次第である。

この離婚問題は後におぞましい事件を招くことになるのだが、それは読んでのお楽しみ。まさかBL小説においてこのようなサスペンスが見られるとは思ってもいなかった。狂気にまみれた真相が明かされる場面は最大の修羅場であり、この作品のひとつのクライマックスとなっている。

さて、荒療治とも言える柊の教育のお陰もあり、美暁は次第に父の意向を汲んで成長を見せ始める。もっとも柊の執拗な教育と開発の賜物は、既に美暁の身体に忘れられぬ快楽を植え込んでいたわけだが。心身ともに成長を促進された美暁である。

一方の柊は、自分は憎まれ役で良いと考えている節があり、美暁が自分に懐くことについて期待していたわけではなかった。自分が忠義を尽くしている社長の気持ちが、その息子に伝わってゆくことこそが柊にとっての喜びであったわけである。柊が美暁に向けた愛、それは「無償の愛」だっと言えないだろうか。

この作品は医療関連の企業を舞台にし、現代に於ける介護・福祉の問題などもにも触れられている。またストーリーの上では次期社長を巡る派閥争いがあったり、柊が社長の秘書となった経緯など、まだまだたくさんの要素が盛り込まれている。

これらからは綿密な取材の跡が伺え、非常に読み応えのある一冊となっている。しかし緻密なゆえに物語が深刻過ぎて、単純なるBL作品を求める向きにはとっつき難い印象を与えてしまうかも知れない。

これは売り出し方の問題なのであろうが、小説として非常に良く出来ているので、これならBLと銘打たず、むしろ普通の棚に堂々並んでいた方がアピール度は高い気がした。

ここには試練を乗り越えて、父から子へ受け継ぐ物語が描かれている。サスペンス、社会問題なども孕み、BLに収まらない作風に仕上がっている。決して甘口にはならない、凛とした空気がここには漂う。

是非ともグローバルな視点をもって、心して読まれたい作品である。


@ちぇっそ@
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2013/02/28 21:05 | 読書感想COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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