9月の空にロシア大三角形を描く
2008.09.13 Sat
<ハードボイルド日記 −番外編−>
休日の朝、ファーストフードで一杯のコーヒーを飲んでから、地下鉄へ飛び乗った。
ジム・トンプスンの本を広げながら車両に揺られ、到着した先は日比谷。
地下通路の出口を出た俺は、アンダーグラウンドの安逸とした気分から叩き起こされ、まばゆいばかりに降り注ぐ陽射しに目をしばたたかせる。
劇場の受付で映画のチケットを手に入れる。
タイトルは「12人の怒れる男」
ロシアを代表する兄弟監督の弟、ニキータ・ミハルコフの最新作だ。
開演まで時間のあった俺は、劇場の周囲を一周してくる。しかし暇をつぶせそうな場所を見つけられず、結局は劇場脇の広場で一服するしかなかった。
まだ本日初回の上映だけに、館内はそれほど混雑していない。左右を空席に挟まれ、ゆったりと構えて上映開始を待つ。
2時間40分もの間、凄まじい集中力で画面に魅せられた。鈍器で頭をガツンとやられたような衝撃。
鼻の頭に血の臭いが立ち込める。久々の感覚だ。
時刻は既に午後3時近い。しかしまた次の予定が立て込んでいる。そろそろ飯の食いどきだがそんな暇はない。間髪いれず、劇場を出た足で今度は有楽町線へ向かう。
駅の改札を出るとそこは池袋。「ストリート・レーサー」と言う映画を見に来たのだ。
これは先ほどのミハルコフと違って、重厚さからも文学性からも掛け離れたカーアクション・キノ。これっぽちも頭を使うことを良しとしない能天気なポップコーン映画だ。
もしこれがロシアの映画でなければ、「こんな低級フィルム、一体誰が見るのだろう」と一笑に付すところ。案の定、館内はお寒い状況であり、鑑賞していたのは俺を含め10人に満たなかったのではないだろうか。
俺を咎める要素はどこにもなく、スクリーンを見ながら昼飯代わりのポップコーンを容赦なく貪っていた。
劇場を出た頃には既に日が暮れかかっていた。強い酒とタバコが無性に恋しかった。
通りで呼び込みをしていたのは、おあつらえ向きにも酒屋の新入荷。声のする方へ呼び寄せられると、とある“ビッグ”な電気店が経営する酒専門店へと辿り着いた。
出来ればバーボンかスコッチをご所望願いたく・・・。
店内で“発見された”のは、これまでウェブサイトではお目に掛かっていたのだが、こうして実物と対面したのは始めてとなる<CLAYMORE>と銘打つスコッチ。
「大剣」、すなわち「クレイモア」。褐色のボディから発散させられるフェロモンに抗うことなど到底出来ぬ相談。
アイルランドを出自とした誉れ高き剣士とお見受けし、こたびは是非とも拙者とお手合わせ願いたく候へば・・・。
御託は結構。
この一本と、さすがに市中でボトルのラッパ飲みは出来んと、もうひとつ「JAMESON」とラベルの貼られたスコッチの一口瓶を買う。
タバコを吸う場所を求めて、結局駅前まで来てしまった。
路上に設置された灰皿の脇で火を点け、早速先ほどのスコッチをひと口呷ってみた。甘くて酸味が強く、いかにもスコッチと言う風情で気分が良くなる。
帰りの有楽町線に乗車し、乗り換えの市ヶ谷のホームにて最後の一口を流し込み、後は来た道と同様、トンプスンの本を開いて車中没頭す。
我が家のある終点へ到着。
改札を抜け、エレベーターを登りきったところで、ヨーロッパ系の貌立ちをした女性2人とすれ違う。
どちらもモデルのようなスタイル。彼女らが交わす言葉の響きから、それがロシア語だと分かる。
今日出会ったロシアを線で結んでみる。
お月見ならぬ、ロシア大三角形を思い描きながらスコッチをたしなむ夕べ。

@セルゲイ・グーイチ(ちぇっそ)@
休日の朝、ファーストフードで一杯のコーヒーを飲んでから、地下鉄へ飛び乗った。
ジム・トンプスンの本を広げながら車両に揺られ、到着した先は日比谷。
地下通路の出口を出た俺は、アンダーグラウンドの安逸とした気分から叩き起こされ、まばゆいばかりに降り注ぐ陽射しに目をしばたたかせる。
劇場の受付で映画のチケットを手に入れる。
タイトルは「12人の怒れる男」
ロシアを代表する兄弟監督の弟、ニキータ・ミハルコフの最新作だ。
開演まで時間のあった俺は、劇場の周囲を一周してくる。しかし暇をつぶせそうな場所を見つけられず、結局は劇場脇の広場で一服するしかなかった。
まだ本日初回の上映だけに、館内はそれほど混雑していない。左右を空席に挟まれ、ゆったりと構えて上映開始を待つ。
2時間40分もの間、凄まじい集中力で画面に魅せられた。鈍器で頭をガツンとやられたような衝撃。
鼻の頭に血の臭いが立ち込める。久々の感覚だ。
時刻は既に午後3時近い。しかしまた次の予定が立て込んでいる。そろそろ飯の食いどきだがそんな暇はない。間髪いれず、劇場を出た足で今度は有楽町線へ向かう。
駅の改札を出るとそこは池袋。「ストリート・レーサー」と言う映画を見に来たのだ。
これは先ほどのミハルコフと違って、重厚さからも文学性からも掛け離れたカーアクション・キノ。これっぽちも頭を使うことを良しとしない能天気なポップコーン映画だ。
もしこれがロシアの映画でなければ、「こんな低級フィルム、一体誰が見るのだろう」と一笑に付すところ。案の定、館内はお寒い状況であり、鑑賞していたのは俺を含め10人に満たなかったのではないだろうか。
俺を咎める要素はどこにもなく、スクリーンを見ながら昼飯代わりのポップコーンを容赦なく貪っていた。
劇場を出た頃には既に日が暮れかかっていた。強い酒とタバコが無性に恋しかった。
通りで呼び込みをしていたのは、おあつらえ向きにも酒屋の新入荷。声のする方へ呼び寄せられると、とある“ビッグ”な電気店が経営する酒専門店へと辿り着いた。
出来ればバーボンかスコッチをご所望願いたく・・・。
店内で“発見された”のは、これまでウェブサイトではお目に掛かっていたのだが、こうして実物と対面したのは始めてとなる<CLAYMORE>と銘打つスコッチ。
「大剣」、すなわち「クレイモア」。褐色のボディから発散させられるフェロモンに抗うことなど到底出来ぬ相談。
アイルランドを出自とした誉れ高き剣士とお見受けし、こたびは是非とも拙者とお手合わせ願いたく候へば・・・。
御託は結構。
この一本と、さすがに市中でボトルのラッパ飲みは出来んと、もうひとつ「JAMESON」とラベルの貼られたスコッチの一口瓶を買う。
タバコを吸う場所を求めて、結局駅前まで来てしまった。
路上に設置された灰皿の脇で火を点け、早速先ほどのスコッチをひと口呷ってみた。甘くて酸味が強く、いかにもスコッチと言う風情で気分が良くなる。
帰りの有楽町線に乗車し、乗り換えの市ヶ谷のホームにて最後の一口を流し込み、後は来た道と同様、トンプスンの本を開いて車中没頭す。
我が家のある終点へ到着。
改札を抜け、エレベーターを登りきったところで、ヨーロッパ系の貌立ちをした女性2人とすれ違う。
どちらもモデルのようなスタイル。彼女らが交わす言葉の響きから、それがロシア語だと分かる。
今日出会ったロシアを線で結んでみる。
お月見ならぬ、ロシア大三角形を思い描きながらスコッチをたしなむ夕べ。

@セルゲイ・グーイチ(ちぇっそ)@
タグ:CLAYMORE



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